作文について

冷戦時代の中国での話です。
 
中国にはスパイとして捕まった人がたくさんいました。スパイは主にアメリカ人で、その人たちは収容所に入れられました。アメリカのスパイ達は、敵国である中国の情報を得るために潜入していたのです。運悪く捕まったスパイ達は、スパイ収容所で毎日ある作業をさせられました。
 
ある作業というのは、作文を書くという作業でした。作文のテーマはいつも、「中国がいかに素晴らしい国で、アメリカがいかに悪い国であるか」という内容でした。スパイたちは心の中で、『中国が素晴らしくてアメリカが悪い?そんなはずないだろう!』と考えていました。しかし、くる日もくる日も作文を書いていると、次第に自分が書いている文章が、少しずつ本当であるかのように思えてきたのです。最初の頃は嘘の文章を書いているという自覚があったのですが、徐々にそのような自覚はなくなり、どんどん文章の内容が真実に思えてきたのです。 
 
数年後に解放されたスパイたちは、故郷アメリカに帰国しました。アメリカに戻れば嘘をつく必要もなくなるのですが、元スパイ達は帰国後もずっと、「中国は素晴らしい国だった。アメリカも見習わなければならない」と主張し続けたのです。周囲の人々は驚き、「お前は洗脳されているぞ」と忠告しましたが、「洗脳されているのはお前達だぞ!」と逆に言い返されてしまい、家族や友人は、「中国でよっぽどひどい目にあったのだろう…」と困ってしまいました。
 
しかし彼らに話を聞いてみると、拷問などはほとんどなく、毎日作文を書き続けただけだったのです。作文がよく書けていればごほうびをもらえるとか、ちゃんと書かないと牢獄に入れられるとか、そのようなこともほとんどなかったそうです。作文というものは、それほど人間の思想に影響を与える力を持っているのです。
 
S.T進学教室では、小学生コースであっても、「自分が親になったらどのような子供に育てたいか?そのためには自分がどのように行動しなければならないか?」「会話をするときに一番大切なことは何か」「幸せな人生とはどのような人生か」などなど、大人でも悩むようなテーマで作文を書いてもらいます。
 
そうしたテーマを扱うのは、文章を書く事が自分自身の考えを確立することにつながると考えている為です。ひとたび種をまけば、子供たちはその種を勝手に育てます。「人生にとって大切なことは何か?」を日ごろ真剣に考える小学生は少ないと思いますが、それについて一度でも真剣に考え、その考えを文章にした子は、確実に新たな考え方を獲得します。先程のスパイたちと同じように、文章を書く事で文章通りの自分をつくることになり、色々な物事について意見を持った子になると思うのです。
 
そのため、「なぜ勉強するのか」「なぜ友達が必要なのか」「なぜ努力は必要なのか」「なぜ学校に通うのか」「なぜ家族の言うことはなかなか素直に聞けないのか」「恥ずかしい人間とはどのような人間のことか」などなど、あらゆるテーマで作文を書き続ければ、大人が口うるさく説得するまでもなく、子供は自分からしっかりとした意見を持つようになると思います。
 
作文を上手に利用すれば、自ら学び、社会や世界について関心が強く、強い探究心を持った子になると考えております。