卒業生のご紹介 part1

ここでは何回かに分けて、S.T卒業生の紹介をさせて頂きます。卒業生の中学時代を知って頂くことで、現在のお子様への勉強などに関して、何らかのご参考になればと考えております。今回はA君について紹介させていただきます。

 

A君はいわゆる不良グループの一人でした。嫌いな先生には授業中徹底的に反抗し、英語や美術の成績はいつも1。髪を染めたり、家出をしたり、夕方過ぎに海を見に行くといって自転車で姿を消したり、夜中にコンビニの駐車場で遊んだりしていました。お母さんは困り果てていましたが、A君に注意をしてもまるで効果がなく、注意すればするほどA君は反抗するのでお手上げ状態でした。

 

A君は小学6年生から中3までS.Tに通っていました。
A君はお父さんとの仲が悪く、お父さんもA君には期待を寄せていないような言動をしていたようですが、一方でA君はお父さんのすごさを認めており、そんなお父さんから認めてもらいたいという思いを強く持っていたように思います。お父さんのすごさについてはA君の話から知ることができたのですが、A君はお父さんを自慢に思う反面、お父さんのようになれないことや、お父さんから期待してもらえていないことに傷つき、それがA君の普段の行動に大きな影響を与えているようでした。

 

A君はしばしばお父さんの話をしてくれました。
お父さんの実家で釣りや素潜りをした際お父さんがとても上手ですごかったという話や、高校時代にインターハイに出場していたことなども話してくれました。
お父さんの様子を語るA君の表情は楽しそうで、お父さんを自慢に思っている様子でした。A君としても、お父さんの話をしている時に、いつの間にか饒舌になっている自分を意外に思ったかもしれません。

 

一方で、お父さんの嫌いなところも話してくれました。お父さんはお母さんの話をきちんと聞こうとせず、お母さんを軽んじていることが家族の雰囲気を悪くしていると思っているようでした。A君は家ではお父さんともお母さんともほとんど口を聞かず、反抗ばかりを繰り返していましたが、お父さんのことも、お母さんのことも、しっかりと観察し、A君なりに家族のことを心配していました。

 

中3になると高校受験について生徒と面談をすることが何回かあるのですが、印象的なのは、ほとんどすべての子が、家族になるべく迷惑をかけまいとして、彼らなりに進路を考えているということです。A君だけに限らず、子供達は本当によくご両親のことを観察しています。家での子供達はダラダラと過ごすことが多いので注意されることが多く、親子が打ち解けて話せる雰囲気を作るのは難しいのですが、いざ面談などで両親や進路のことについて聞いてみると、驚くほど思いやりに満ちているのです。S.Tとしては、子供たちのそのような思いをなるべくご両親に伝えていくと同時に、ご両親の期待や不安についても、子供たちにうまく伝えていくように心がけています。

 

家では反抗的だったり、何を考えているのか分からない様子の子供たちが、しっかりとお父さんお母さんの苦労を受け止め、両親からの期待や評価に強い影響を受け、それにできるだけ報いようと彼らなりの貢献の方法を探しています。その姿勢が色濃く出るのが、高校受験での進路選択なのだと思います。

 

しかし、中学生が受験を自分の問題として考え、行動し始めるのは、大人が期待するよりもずっと後です。塾では1日も早く受験生になって欲しいと考え、色々な機会に話をしたりしますが、早い段階から受験を意識した行動を取れる子は多くありません。また、両親から自分の能力を上回る(と本人が思っている)期待を受けていたり、逆にまったく期待を受けていなかったりすると、子供たちは諦めたり、反抗したりして、自尊心を守るために独自の態度を取り始めます。多くの子は遅かれ早かれ、高校受験が避けがたいものであり、勉強に取り組まざるを得ないことを自覚しますが、それを実感するまでの期間は期待に反する行動が続きがちです。

 

A君は勉強が嫌いで、定期テストでの得点も非常に悪かったのですが、そんなA君は中3になってから大きく変わりました。長かった夏期講習や冬期講習もサボらずにしっかりと頑張り抜き、偏差値は10以上伸びました。受験が近くなると塾に自主勉強に来るようになり、最後の北辰テストでは、彼が志望する公立高校の学科では1番の成績を収めるまでになりました。A君はすさまじい内申点でしたが、何とか学力でカバーし、無事に合格することができました。合格発表の日は塾に電話で合否を伝えることになっているのですが、A君は塾に直接やってきて、「合格しました!」と嬉しそうに伝えてくれました。

 

そして4月の高校入学式の日、A君はお母さんと二人で塾にやって来てくれました。お母さんに言われていたのか、「これ、どうぞ」と手土産を渡してくれました。お母さんの手前、A君は照れくさそうで仏頂面でしたが、照れくささの中にも、A君の成長をはっきりと見て取れました。

 

高校受験以前のA君は、両親が願う理想の自分像を実現することができないため、反抗することでしか期待というプレッシャーを跳ね返すことができませんでした。しかし、自分の能力や現状をA君なりに受け入れ、そうした現状よりも一歩上の目標を設定し、努力を通じてそれをクリアーしたことで、大きな一歩を踏み出すことができたのだと思います。また、ご両親も、そのようなA君の努力の過程を見る中で、A君との間に新たな関係ができたようでした。

 

A君の変化は、高校受験が精神的な成長にも大きな役割をもたらすものだということを教えてくれました。そして、たった1年でこれほど変わったA君を見たことで、中学生の成長の急激さを改めて実感することができました。